2026年1月2日金曜日

税務署はなぜ扶養是正があることがわかるの?

  1. 結論
    税務署が「扶養是正」を把握できるのは、
    市区町村が給与支払報告書や申告内容から「扶養控除の誤り」を見つけて、その情報(扶養是正情報)を国税庁に提供する仕組みが、法令・通達レベルで整備されているからです。

もう少し人間語でいうと、

① 会社が出した給与支払報告書/従業員の申告情報
② 配偶者や扶養親族本人側の所得情報(給与支払報告書・確定申告など)
③ それを市区町村がマイナンバーで突き合わせ
④「この扶養控除おかしくない?」という情報を、地方税→国税(税務署)に送る

という情報連携の結果、「扶養是正の対象者」が税務署にリストアップされます。内閣府ホームページ+2内閣府ホームページ+2


2. 思考プロセスと根拠(ステップ別)

ステップ1:質問の論点整理

ご質問

税務署はなぜ扶養是正があることがわかるの?

ここでの中心論点は:

  • そもそも「扶養是正」が必要になるのは、どんなときか

  • その「誤り」を、税務署が どの情報を見て、どのルートで把握しているのか

の2つです。

ステップ2:適用除外・前提条件の整理

まず、「扶養控除」そのものの前提を確認します。

  • 所得税の扶養控除は、「合計所得金額48万円以下(給与のみなら収入103万円以下)※令和7年現在」等の要件を満たす控除対象扶養親族がいる場合に受けられる所得控除です。国税庁

  • 同一人について、複数の人が重複して配偶者控除・扶養控除を受けることはできません。国税庁+1

したがって 税務署が問題にするのは、例えば:

  • 扶養親族本人の所得が基準(48万円※現行)を超えているのに、親の側で扶養控除を取っている

  • 夫婦など複数人が、同じ人を二重に扶養に入れている

  • 本人の所得が1,000万円超なのに配偶者控除等を取っている

といった「条文上アウトなケース」です(これは条文と国税庁タックスアンサーに明示)。国税庁+1

ここまでは「どんなものが扶養是正の対象になるか」の話。
次に、「それをどう見つけているか」が本題です。


ステップ3:詳細な法的解釈と仕組み(本質部分)

3-1. 市区町村がまず誤りを把握する

内閣府・総務省資料によると、
地方税当局(市区町村など)は、会社から提出された給与支払報告書等をもとに、所得控除の誤りや合計所得金額の変更を把握する とされています。内閣府ホームページ+1

この公式資料の抜粋要旨(趣旨)は:

地方税当局から国税当局への情報連携として

  • 給与支払報告書等により把握された

    • 扶養是正情報(扶養控除や配偶者控除の適用誤り)

    • 申告漏れの収入情報

    • 無申告情報
      などを国税当局に提供している

と明記されています。内閣府ホームページ+1

つまり、

  1. 会社が毎年1月頃に市区町村へ提出する「給与支払報告書」

  2. 個人住民税の申告・所得税の確定申告データ(住民税の課税のため、市区町村が閲覧できる)厚生労働省+1

これらを市区町村が突き合わせ、

  • 「この人はAさんの扶養親族として申告されているけど、本人の給与支払報告書を見ると所得が48万円を超えている」

  • 「同一人物が複数の納税者の扶養親族になっている」

といった矛盾を 地方税側でまず検出 します。

3-2. その「扶養是正情報」が税務署へ送られる

上記のとおり、
地方税当局が把握した「扶養是正情報」「申告漏れ情報」「無申告情報」は、
正式な情報連携スキームに基づいて、国税側(国税庁・税務署)へ提供する とされています。内閣府ホームページ+1

この仕組みは、マイナンバー制度を前提とした「国税・地方税間の情報連携」の一環として位置付けられています。内閣官房+1

結果として税務署側には、

  • 「誰の、どの年分について、どの扶養控除が怪しいか」

というピンポイントの情報がリストの形で上がってきます。
これをもとに税務署が会社あてに

「扶養控除等の控除誤りの是正について」

といった通知(いわゆる扶養是正)を送って、
年末調整のやり直しや不足税額の納付を求める、という流れです。マイナビ税理士+1

3-3. マイナンバーによる照合の精度向上

マイナンバー制度の基本方針では、

  • 社会保障・税分野(国税・地方税を含む)の間で、情報連携基盤を通じたデータ連携を行うこと
    が明記されています。内閣官房+1

これにより、

  • 扶養者(控除を受けている人)

  • 扶養されている人(配偶者・子など)

それぞれに付された個人番号を使って、
所得情報や扶養状況が システム上ひも付きで管理・照合 されやすくなっています。

その延長線上として、個人住民税での二重扶養の把握を強化する新たな情報連携の仕組みが、令和8年度以降順次導入される方向で検討されており、自治体間・国税との連携がさらに強化される見込みです(総務省・内閣府資料より)。内閣府+1


3. 根拠資料一覧(公的資料)

※主なものだけ挙げます。いずれも公式サイト等の一次情報です。

  1. 国税庁タックスアンサー No.1180「扶養控除」

    • 扶養控除の要件・所得基準など

    • 出典:国税庁ホームページ国税庁

  2. 国税庁タックスアンサー No.1181「納税者が2人以上いる場合の扶養控除の所属の変更」

    • 扶養親族の所属が重複できないことなど

    • 出典:国税庁ホームページ国税庁

  3. 内閣府(規制改革推進会議資料等)「地方税当局から国税当局への情報連携」関連資料

    • 地方税当局が把握した「扶養是正情報・申告漏れ情報・無申告情報」を国税に提供している旨

    • 出典:内閣府ホームページ等内閣府ホームページ+1

  4. 「社会保障・税に関わる番号制度についての基本方針」(内閣官房)

    • 番号制度(マイナンバー)により、国税・地方税分野で情報連携を行う旨

    • 出典:内閣官房ホームページ内閣官房+1

  5. 個人住民税検討会等の資料(内閣府・総務省)

    • 個人住民税における扶養控除等の適正化、情報連携強化の方向性

    • 出典:内閣府・総務省関連資料内閣府+1


4. 注意事項・リスク(自己批判的な整理)

  • 「見つからない=問題ない」ではない

    • 制度上、地方税・国税間の情報連携は整備されていますが、人的・システム的リソースの制約から「全件を完全にチェックしている」とまでは言い切れません。

    • 扶養是正の通知が来ていないことは、「適正である」という法的なお墨付きではありません。

  • 情報連携の精度にはタイムラグや範囲の限界がある

    • 二重扶養のように複数自治体にまたがるケースは、従来は把握が難しいとされてきており、令和8年度以降に新たな仕組みを導入する方向で改善中です。内閣府+1

    • つまり、制度設計上も「今後さらに精度を上げていく途中段階」であることが示唆されています。

  • 実務上は「従業員からの申告誤り」が原因になることが多い

    • 配偶者・子の実際の所得が年末調整時の見込みより増えたのに、会社側に報告されず、そのまま扶養控除を適用してしまうパターンが典型です。

    • 税務署の扶養是正は、こうした「放置された誤り」を後ろから是正する役割を果たします。マイナビ税理士+1

  • 個別事情で結論が変わる可能性

    • 「生計を一にするが別居」「留学・単身赴任」「障害者控除との関係」など、扶養関係の認定は実態によって微妙に変わり得ます。

    • 同じ「扶養是正」の通知でも、よく読むと指摘内容や理由がケースごとに異なることがあるため、通知文書の趣旨と根拠条文を個別に確認する必要があります。

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