2026年3月21日土曜日

賃金改定などがあった場合、労働条件通知書の再交付や雇用契約書のまき直しはしなければいけませんか?

 

1. 結論

  • 賃金改定(昇給・手当改定など)があったからといって、法律上「必ず」労働条件通知書を再交付したり、雇用契約書を“まき直し”しなければならない、とは一般には整理されていません(労働条件明示義務は原則「労働契約の締結時」にかかるため)。 (厚生労働省)

  • ただし、有期契約の「更新」は新たな労働契約の締結とされ、更新のタイミングでは(少なくとも明示ルール上)改めて明示が必要になります。

  • 実務的には、トラブル防止のため、変更した部分だけでも「労働条件変更通知書」や「覚書(変更合意書)」で書面化するのが望ましい対応です(特に不利益変更の可能性があるとき)。 (厚生労働省)


2. 思考プロセスと根拠

ステップ1:論点整理

論点は大きく2つです。

  1. 労働条件通知書(労働条件の明示)を“再交付”する法的義務があるか

  2. 賃金改定という「労働条件の変更」をどう成立させ、どう証拠化するか(合意 or 就業規則等)


ステップ2:適用除外・前提の簡易判定フロー(ここが結論を左右します)

次のどれに当たるかで扱いが変わります。

  • A. 新規採用/入社時
    労働条件の明示が必要(一般に「労働条件通知書」等で行う)。(根拠:労働契約締結時に書面で通知する旨、出典:(厚生労働省))

  • B. 有期契約の更新(契約社員等)
    更新=新たな労働契約の締結なので、更新時にも明示が必要
    (根拠:「契約の更新は新たな労働契約の締結」「更新の際には新たなルールに則った明示が必要」、出典:)

  • C. 無期雇用などで、在職中に賃金だけ改定(年1回の昇給等)
    → 「採用時の明示」とは別で、中心は**“変更が有効に成立しているか(合意等)”**です。
    再交付・まき直しが「必須」とまでは言いにくい一方、書面化は強く推奨されます。
    (根拠:労働契約の変更は合意で可能/就業規則変更で不利益変更は制限、出典:(厚生労働省))


ステップ3:詳細な法的解釈(本質分析)

  • 労働条件の明示義務の“かかる時点”
    厚労省は「労働契約締結時に労働条件を書面で通知」する枠組みを説明しています。
    (根拠:労働契約締結時の書面通知、出典:(厚生労働省))

  • “変更があったら必ず再明示”という扱いか?
    少なくとも、明示ルール改正に関する厚労省Q&Aでは、**「既に雇用されている労働者に改めて明示する必要はない」**と明言しつつ、理解促進のため「再度の明示は望ましい」としています。
    → ここからも、変更の都度“必ず再交付”という一律の義務付けではなく、更新等の局面で義務が強く問題になる整理が読み取れます。
    (根拠:既雇用者への再明示は不要/望ましい、有期更新は新たな締結、出典:)

  • 賃金改定は「労働契約の変更」なので、成立要件が重要
    厚労省は、労働契約は合意で変更できること、また就業規則の一方的変更で不利益変更はできず、就業規則による場合は合理性+周知が必要と整理しています。
    (根拠:労働者と使用者が合意すれば変更可/就業規則変更の要件、出典:(厚生労働省))

  • 結局、何をやるのが適切か(実務の落としどころ)
    形式として「雇用契約書を全部作り直す」までやらなくても、

    • 変更内容(改定後賃金・適用日・算定方法など)

    • 変更の根拠(個別合意なのか、就業規則/賃金規程改定なのか)
      書面(変更通知書・覚書)で残すのが安全です。
      (根拠:変更は合意が原則、手続遵守と事前の話合いの必要性、出典:(厚生労働省))


3. 根拠資料一覧(一次情報・公的資料)

  • 厚生労働省「労働契約締結時の労働条件の明示 ~労働基準法施行規則が改正されました~」 (厚生労働省)

  • 厚生労働省「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール」 (厚生労働省)

  • 厚生労働省「令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A」(PDF)

  • e-Gov法令検索「労働契約法」 (e-Gov 法令検索)

  • 厚生労働省(公的PDF)「労働条件明示のルール」(罰則言及含む) (厚生労働省)


4. 注意事項・リスク

  • **不利益変更(実質的な賃下げ、手当廃止、計算方法変更で支給総額が下がる等)**は、合意の取り方・説明の仕方・就業規則改定の合理性が争点になりやすいです。 (厚生労働省)

  • 有期契約の更新は「更新=新規締結」扱いなので、更新時の明示漏れが起きやすい点に注意。

  • 「再交付が義務でない」場面でも、書面がないと後で『合意していない/聞いていない』争いになりやすいので、変更部分だけでも書面化が安全です。 (厚生労働省)

  • 労働条件明示義務違反には罰則があり得るため、「採用時・更新時」の明示は特に落としやすいポイントです。 (厚生労働省)

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