2026年1月1日木曜日

賞与計算で、既に退職済みの人を乙欄で計算する場合、1,613,700円の支払いだと所得税はいくらですか?雇用保険料は払うけど、社会保険料は0円です。

  1. 結論
    前月に給与がなく、退職者に賞与 1,613,700円を 乙欄 で支給し、雇用保険のみ控除(健康保険・厚生年金等なし)という前提で令和7年分の源泉徴収税額表に基づいて計算すると、

源泉所得税(復興特別所得税を含む)は 255,000円

となります。


  1. 思考プロセスと根拠

ステップ1:質問の論点整理

  • 対象:既に退職している元従業員

  • 支給内容:賞与 1,613,700円

  • 税区分:乙欄で源泉徴収

  • 控除:雇用保険料のみ控除、いわゆる「社会保険(健保・厚年等)」は0円

  • 知りたいこと:このケースの「賞与に対する源泉所得税額」

ここでは、「退職後に支給する賞与(給与所得)の源泉税をどう計算するか」 が論点です。

なお、所得税法上の「給与所得」には賞与が含まれますので、この支給は退職所得ではなく給与所得として扱われます(所得税法28条1項)。


ステップ2:適用除外の有無の確認(簡易判定)

  1. 退職所得扱いになるか?

    • 退職金として支給される退職手当等であれば「退職所得」として別計算ですが、今回ユーザーの前提は「賞与」であり、かつ雇用保険も控除する通常の給与実務の文脈です。

    • 国税庁の解説でも、退職後に支給期が到来した給与や賞与は原則「給与等」として源泉徴収する扱いになっています。国税庁

→ よって、退職所得ではなく給与(賞与)としての源泉徴収のルールを適用します。

  1. 「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使えるか?

    • 国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和6年分)」では、前月の給与の「社会保険料等控除後の金額」と扶養人数から、「賞与に乗ずべき率」を出す仕組みです。国税庁

    • しかし同じ表の注4で、

      前月中の給与等の金額がない場合 … この表によらず、財務省告示第115号の規定により月額表を使って税額を計算する
      と明記されています。国税庁

今回「既に退職済みの人」という前提から、賞与支給月の前月に給与の支払いがないケースを想定すると、この注4に該当し、

「算出率の表」は使わず、月額表(乙欄)を用いて計算する方式

になります。

※実務上、もし賞与支給月の前月にも給与が出ている(退職後ただちに支給した等)場合は、「算出率の表」で前月給与を使って計算します。その場合は本回答の数値とは変わります。


ステップ3:詳細な計算プロセス

3-1. 「社会保険料等」と雇用保険の位置付け

国税庁の源泉徴収税額表(月額表)の注記では、

「社会保険料等」とは、所得税法74条2項の「社会保険料」及び同法75条2項の「小規模企業共済等掛金」をいう

とされています。国税庁

所得税法74条2項の列挙条文には「雇用保険の被保険者として負担する労働保険料」が明示的に入っており、雇用保険料も社会保険料控除の対象であることが確認できます。ゼイケン

したがって、「賞与から控除される社会保険料等」の中には、

  • 健康保険・厚生年金・介護保険等(今回 0円)

  • 雇用保険料(今回あり)

が含まれます。


3-2. 雇用保険料額の算定(前提)

令和7年度(2025年4月1日~2026年3月31日)の雇用保険料率は、一般の事業について

  • 労働者負担分:5.5/1,000

  • 事業主負担分:5.5/1,000

  • 二事業分(事業主のみ):3.5/1,000

と公表されています。千葉県公式サイト

今回の賞与支給タイミングがこの年度内(令和7年度)であり、かつ一般の事業であると仮定すると、

  • 総支給賞与:1,613,700円

  • 労働者負担の雇用保険料:
    1,613,700円 × 5.5/1,000 = 8,875.35円 → 1円未満切捨てで 8,875円

(雇用保険料の端数処理は通常 1円未満切捨てで取り扱われます。)


3-3. 賞与の「社会保険料等控除後の金額」の算定

「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」でも、「社会保険料等控除後の金額」を賞与額として扱うことが明記されています。国税庁

今回も同様に、所得税計算上の「社会保険料等控除後の賞与額」は、

  • 1,613,700円 - 8,875円 = 1,604,825円

となります。


3-4. 月額表方式による賞与税額の計算(前月給与なしの場合)

前述のとおり、前月給与がない場合は、財務省告示第115号に基づき月額表を用いて賞与の税額を計算します。国税庁

具体的な計算手順(実務で一般的に使われる手順)は次の通りです:

  1. 賞与の社会保険料等控除後の金額を 6 で割る

    • 1,604,825円 ÷ 6 ≒ 267,470円(1円未満切捨て)

    この 267,470円を「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」とみなします。

  2. 令和7年分 給与所得の源泉徴収税額表(月額表・乙欄)で税額を確認
    国税庁の令和7年分月額表(二:167,000円〜289,999円)によれば、

    • 「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」
      266,000円以上 269,000円未満 の行において

    • 乙欄の税額は 42,500円 となっています。国税庁+1

    267,470円はこの「266,000円〜269,000円未満」に該当しますので、
    1ヶ月分の税額は 42,500円 です。

  3. この税額を6倍して賞与の税額とする

    • 42,500円 × 6 = 255,000円

これが、復興特別所得税を含めた源泉所得税の合計額です。
(国税庁の源泉徴収税額表には復興特別所得税額も含まれていることが明記されています。国税庁


3-5. 雇用保険率の違いによる影響の有無

上記では令和7年度の一般の事業の労働者負担率 5.5/1,000 を前提にしましたが、仮に 6/1,000 や 7/1,000 として再計算しても、

  • 社会保険料等控除後の賞与を 6 で割った金額は
    いずれも 266,000円〜269,000円未満 の範囲に収まり、

月額表の該当する行(乙欄:42,500円)は変わりません。
したがって、雇用保険率が多少違っても、このレンジ内であれば最終税額 255,000円は変わらないことになります。


  1. 根拠資料一覧

  2. 国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(令和7年分)月額表」

    • 月額表(二:167,000円〜289,999円)の「266,000円〜269,000円未満」行における乙欄税額 42,500円、および「社会保険料等」の定義。国税庁+1

  3. 国税庁「源泉徴収税額表(令和7年分)全体版」

    • 復興特別所得税を含む税額表であることの説明部分。国税庁+1

  4. 国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和6年分)」

    • 注4:前月給与がない場合等には、月額表を用いて税額を計算する旨の規定。国税庁

  5. 所得税法第74条「社会保険料控除」

    • 雇用保険の労働保険料が社会保険料控除の対象であること。ゼイケン

  6. 令和7年度 雇用保険料率(都道府県労働局・自治体等が公表する資料)

  7. 財務省「所得税法等の改正(令和7年度税制改正)」

    • 給与所得控除・基礎控除の見直しと、それに伴う源泉徴収税額表等の見直しに関する説明。財務省


  1. 注意事項・リスク

  • 前月給与があった場合

    • 実際に賞与支給月の前月に給与支給がある場合(例:3月末退職、4月上旬に賞与支給など)、前月給与の有無・金額によっては「算出率の表」を使うべきケースがあります。

    • その場合、本回答の 255,000円 とは異なる結果になる可能性があります。

  • 支給時期と税額表の年度

    • ここでは「令和7年分源泉徴収税額表」(令和6年分と税額は同じ)を前提としています。国税庁

    • 令和8年1月1日以後に支払う給与・賞与については、令和7年度税制改正に伴い新しい税額表が適用される予定であり、その場合は別途その新表で計算する必要があります。財務省+1

  • 甲欄・乙欄の選択

    • 退職後の支給であっても、仮にその支給が「主たる給与」として扱われる特殊なケースでは甲欄になる可能性がありますが、通常は退職後の支給は乙欄扱いです。

    • 実務では、退職時に扶養控除等申告書の効力をどう扱うか、会社ごとの運用確認が必要です。

  • 退職所得との線引き

    • 実質が「退職金の一部」であるのに形式上「賞与」として処理すると、税務調査で指摘されるリスクがあります。

    • 就業規則・退職金規程・支給決定の経緯を踏まえ、本当に賞与として扱うべきかは別途検証が必要です。

  • 本計算はあくまで源泉徴収税額

    • ここでの 255,000円 はあくまで「その賞与支給時に天引きする源泉所得税額」であり、個人の年間所得・各種控除を踏まえた最終的な所得税額とは必ずしも一致しません。

    • 元従業員が他の収入や年末調整・確定申告を行うことで、還付・追徴が生じる可能性があります。

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