結論
みなし残業(固定残業)時間を45時間→30時間に減らす場合は、ざっくりいうと
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① 新しい賃金設計(基本給・固定残業代・調整給)の設計
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② 就業規則・賃金規程・雇用契約書の改定
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③ 従業員への説明と個別同意の取得(できる限り書面)
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④(常時10人以上)就業規則変更の労基署届出+周知
という流れが必要です。
手取りを調整給でキープする設計自体は可能ですが、調整給も「賃金」として残業単価の計算に入れる必要がある点には要注意です。都道府県労働局所在地一覧
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思考プロセスと根拠
ステップ1:今回の論点整理
ご質問内容から、法的に整理すべきポイントは以下と整理しました。
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固定残業時間を45→30時間に減らすことは、**労働条件変更(賃金制度の変更)**に当たるので、どんな手続きが必要か
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調整給をつけて手取りを変えない場合でも、「不利益変更」になるかどうか、個別同意や就業規則変更の要否
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調整給を含めた新しい賃金構造が、固定残業代として適法か(明確区分性・残業単価計算)
ステップ2:適用除外など簡易チェック
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固定残業代そのものについて、適用除外や特別な対象者区分はありません。
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問題になるのは「法定の割増賃金(労基法37条)を満たしているか」「労働条件の不利益変更手続(労契法9・10条)」の部分です。都道府県労働局所在地一覧+1
→ 特別な「免除」や「適用除外」は無いので、本題の労働条件の変更手続き・賃金設計の話に進みます。
ステップ3:詳細な法的解釈と実務フロー
3-1. 固定残業代制度の前提整理
厚労省の資料では「固定残業代」とは
一定時間分の時間外労働・休日労働・深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金
とされており、その場合
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① 固定残業時間数
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② その金額(計算方法)
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③ 固定時間を超えた残業には、別途割増賃金を支払うこと
を労働条件として明示すべきとされています。厚生労働省+1
→ 45h→30hに変更する場合も、30時間分の割増賃金額が明確に出せる設計である必要があります。
3-2. 労働条件変更としての位置づけ(労契法8~10条)
労働契約法では
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第8条:労働条件の変更は「労働者と使用者の合意」で可能
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第9条:就業規則変更により労働者に不利益に労働条件を変更することは原則不可
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第10条:ただし、その変更が合理的で周知されていれば、例外的に労働者を拘束し得る
と定めています。都道府県労働局所在地一覧+3法令データ提供システム+3スタートアップ労働+3
今回のポイントは
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固定残業「時間数」は減る(30h超の残業は別途残業代が発生するようになる)
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手取りは調整給で維持される
という設計なら、多くの場合「実質的には不利益とまでは言いにくい」ケースが多いです。
ただし、
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「将来的に調整給を段階的に削っていく前提」のように見える
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実態として残業時間がほとんど0~10時間程度なのに、固定残業時間だけ減らされ、総額も実は微減
というような状況だと、労働者から「不利益変更では?」と争われる余地があります。
→ 実務としては、
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「不利益はない(むしろ30時間超分は別途支給されるので有利)」設計にして、
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かつ個別同意を取る(労契法8条)
のが一番安全です。スタートアップ労働+1
3-3. 就業規則・賃金規程の変更手続(常時10人以上の事業場)
常時10人以上の労働者がいる事業場では、
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賃金の決定・計算方法は就業規則の絶対的必要記載事項(労基法89条)
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就業規則変更時には
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労働者の過半数で組織する労働組合
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又は過半数代表者
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の意見を聴取し、意見書を添付して労基署に届出が必要とされています。厚生労働省+4スタートアップ労働+4厚生労働省+4
さらに、変更後の就業規則は、
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配布
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掲示・備付
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電子媒体で常時閲覧可能にする
などの方法で周知しなければ効力が生じないと解されています(労基法106条)。スタートアップ労働+2都道府県労働局所在地一覧+2
3-4. 調整給の位置づけ(残業単価への影響)
労基法37条の割増賃金を計算する「1時間あたりの賃金額」は、
通常の賃金(多くの手当を含む)を、1か月の平均所定労働時間で割って算出
するもので、厚労省資料でもその考え方が示されています。都道府県労働局所在地一覧
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通常、「〇〇調整手当」「〇〇調整給」などの名称であっても、
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出張旅費・実費弁償などを除き、
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毎月支給されるものは賃金に含まれると解されます。
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→ したがって、
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固定残業30時間分
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調整給
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その他の手当
の全てを含めた「通常の賃金」から、残業単価を計算する必要があります。
調整給を「残業単価の計算から除外」すると、未払い残業のリスクが高いです。
3-5. 実務上の手順(チェックリスト)
あなたが社内で実際に動くことをイメージした、簡易フローです。
① 現状の整理
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現行の
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雇用契約書
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就業規則・賃金規程
に「固定残業45時間分」「金額・時間数・超過分の支払い方法」がどう書いてあるか確認
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実態としての
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平均残業時間
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45時間を超えるかどうか
を把握
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② 新しい賃金設計(シミュレーション)
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例)
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現在:基本給22万円+固定残業代8万円(45時間分)=30万円
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変更後:基本給23万円+固定残業代6万円(30時間分)+調整給1万円=30万円
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上記のように
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合計手取りは現状と同等
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30時間を超えた残業には別途割増賃金が発生
となるように、一人ひとりのモデル給与をシミュレーション。
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③ 新しい条文(就業規則・賃金規程)の案を作る
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「みなし残業は月30時間、金額〇円。30時間を超える時間外労働については別途割増賃金を支給する」
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「調整給〇〇は、毎月支給する賃金であり、時間外労働の割増賃金単価算定の基礎に含める」
といった内容を盛り込む。
④ 社内説明資料の作成
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変更趣旨:
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実態に即した固定残業時間への見直し
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30時間超分は別途支給することで、長時間労働抑制・透明性を高める
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給与例:
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変更前後で手取りが変わらないこと
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30時間を超えた場合の支給イメージ
を図や表で見せると納得されやすいです。
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⑤ 従業員への説明・個別同意の取得(労契法8条)
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面談や説明会で、
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新旧の賃金内訳
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固定残業時間数の変更
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将来の残業代支給イメージ
を説明。
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「賃金条件変更合意書」(簡単なものでOK)に
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変更内容
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適用開始日
を明記し、**本人署名・押印(又は電子承諾)**をもらう。スタートアップ労働+1
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⑥ 就業規則・賃金規程の変更手続(常時10人以上の場合)
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過半数労組または過半数代表者を適法な手続で選出したうえで、意見書を取得。厚生労働省+1
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変更後の就業規則・賃金規程+意見書を添付して、所轄労基署に届出(労基法89・90条)。スタートアップ労働+1
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労働者への周知(掲示・配布・イントラ掲載など)を実施。都道府県労働局所在地一覧+1
⑦ 関連書類の整合性チェック
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雇用契約書ひな形
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採用時の求人票・募集要項(固定残業時間数・金額の記載)厚生労働省+1
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36協定の上限時間(今回の見直しを機に、残業抑制の方向で見直すかどうか)
をあわせて整えると、後々の説明がスムーズです。
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根拠資料一覧
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厚生労働省「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」厚生労働省+1
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労働契約法8~10条(e-Gov/日本法令外国語訳DB)法令データ提供システム+1
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厚生労働省「就業規則の変更はどのように行えばよいのでしょうか?」(スタートアップ労働条件)スタートアップ労働
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厚生労働省「就業規則について」「有期雇用労働者に適用される就業規則の作成及び変更の手続き」スタートアップ労働+1
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厚生労働省「モデル就業規則」解説部分(過半数代表・意見書・不利益変更の留意点)厚生労働省
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各地労働局の「就業規則作成ハンドブック」「就業規則作成のポイント」都道府県労働局所在地一覧+2都道府県労働局所在地一覧+2
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厚生労働省資料「割増賃金の計算方法」都道府県労働局所在地一覧
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注意事項・リスク
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調整給の「一時しのぎ化」リスク
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「当面は調整給で手取り据え置き、徐々に調整給を削る」という運用は、実質的な賃下げとなり得るため、別途「不利益変更」としての慎重な検討・同意が必要になります。
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調整給を残業単価に入れ忘れるリスク
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名称にかかわらず、毎月定期的に支払う調整給は賃金とみなされるため、割増賃金単価算定の除外は危険です。
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過去の固定残業代の適法性が蒸し返される可能性
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今回の見直しをきっかけに、従業員側から
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「そもそも今までの45時間固定残業はちゃんと追加支給していたのか」
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「求人票と実態が違うのではないか」
などが問題化することもあり得ます。
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個別同意を省略した場合の争いリスク
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手取りが変わらない設計であっても、「自分は残業をそもそもやらないのに、制度変更で何か損をしているのでは」と感じる人も出るため、できるだけ個別合意書をもらう運用が安全です。
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