結論
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「中途入社の人に年末調整で多額還付したから、その分を後で税務署から“まるっと”会社に返してもらう」というイメージは基本 NG です。
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正しい仕組みは
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① 会社がいったん従業員に還付する
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② その還付額は、年末調整をした月以降に会社が納める源泉所得税から差し引いて(相殺して)回収する
なので、通常は会社の“持ち出し”にはなりません。国税庁+1
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ただし、
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解散・廃業や、源泉税がそもそも発生しないなどで 相殺しきれない過納額が残る場合に限り、
「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」で税務署に還付請求することができます。国税庁+1
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したがって、
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通常ケース → 現金で“あとから税務署が会社に全額返してくれる”ということではなく、納付額からの控除で調整
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特殊ケース(相殺しきれないとき)→ 書類を出して税務署から還付
という整理になります。
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思考プロセスと根拠
ステップ1:論点整理
ご質問のポイントは、
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中途入社者に対して年末調整をした結果、会社からかなり多額の還付をした場合
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その後に、その還付額を税務署から “会社が” 全額返してもらえるのか(=会社の財布が減ったままにならないのか)
という点です。
ここでは、
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正しい年末調整の結果として還付が生じた場合
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(誤りによる「還付しすぎ」は別問題)
に分けず、まず制度の原則から整理します。
ステップ2:中途入社者でも「前職分込み」で年末調整する前提
国税庁タックスアンサー「No.2674 中途就職者の年末調整」では、
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その年中に他社から給与の支払を受けている人については、
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前職の源泉徴収票を提出してもらい、
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その給与・源泉税額も含めて、最後に在籍している会社が年末調整を行う
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とされています。国税庁+1
したがって、
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前職でたくさん源泉徴収されていた人
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住宅ローン控除などで年税額が大きく減る人
については、現職の会社が「前職分も含めて」まとめて精算し、その結果として多額の還付が発生することがあります。
ここでしばしば、
「前職で取られた税金まで、うちが一気に返してるけど、これ会社の持ち出しじゃないの?」
という不安が出ますが、これに対してNo.2675で精算方法が明確に決まっています。
ステップ3:年末調整の過不足額の精算方法(国税庁 No.2675)
タックスアンサー「No.2675 年末調整の過不足額の精算」では、
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源泉徴収してきた所得税等の合計額が年調年税額より多い場合、
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その差額(過納額)は、従業員ごとに還付する
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還付の具体的方法として、次の順番が定められています。国税庁+1
(1) 年末調整を行った月分の源泉徴収税額から差引いて還付
年末調整を行った月分として納付する「給与等に対する源泉徴収税額」のうちから差し引き、過納となった人に還付します。国税庁
つまり、
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たとえば 12 月に年末調整をして従業員に 30万円 還付した場合
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同じ 12 月分の源泉所得税(本来納めるべき額)から、その 30万円 を差し引いて計算します。
この時点で、会社の実際の納付額は減るので、
「会社のポケットから 30万円 持ち出し」ということにはなりません。
(2) それでも還付しきれない場合 → 次の納付分から順次差引き
No.2675 では続けて、
年末調整を行った月分の徴収税額だけでは還付しきれないときは、その後に納付する源泉徴収税額から差し引き順次還付します。国税庁+1
とされており、
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12 月の源泉税だけでは足りない場合
→ 翌月以降(納期の特例なら翌年の納付)の源泉所得税から順々に控除
していきます。
それでも会社が立て替えた分は、順次「納付しなくてよい源泉税」として回収される仕組みです。
ステップ3-2:それでも回収しきれない場合の「税務署からの還付」
さらに No.2675 では、特別なケースとして、
次の場合には、「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」を作成し、税務署長に提出し、税務署から還付を受けます。国税庁+1
とされ、その詳細は、
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A2-17「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額の還付請求」で、
(1) 解散・休業等により給与の支払者でなくなり、還付できなくなった場合
(2) 過納額を還付すべきこととなった月の翌月1日から 2か月を経過してもなお還付すべき過納額が残る場合 等国税庁+1
と具体的に列挙されています。
ここでのポイントは:
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あくまで「年末調整の結果として生じた過納額」が前提であり、
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原則は 源泉税の納付額との相殺で精算
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それでもなお「どうしても相殺しきれない残り」の分だけ、
→ 書類を出して税務署から還付してもらう(=会社が従業員に還付すべき税額を税務署から受け取る)
という仕組みです。
ステップ3-3:今回のご質問に即した整理
Q. 中途入社者に対して年末調整でたくさん還付した。後で税務署にその額まるっと還付してもらえる?
これを制度に当てはめると:
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正しく年末調整した結果の多額還付であれば
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その還付額は、
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まず 年末調整をした月の源泉税の納付額から控除
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足りなければその後の納付額から順次控除
で精算されるので、
→ 会社が最終的に損をするわけではない(=“会社負担”にはならない)。国税庁+1
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それでも、
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解散・休業などで今後源泉税が発生しない
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還付額が非常に大きく、翌々月まで回しても相殺しきれない
などの国税庁が定めた要件に該当するときだけ、
→ 「年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」を出して税務署から還付を受けることができます。国税庁+1 -
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一方で、
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計算ミスで「還付しすぎた」場合
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これは「過納額」ではなく誤った年末調整であり、
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税務署に「会社に返して」と請求する性質のものではありません。
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原則として、年末調整のやり直しや、不足税額の追加徴収、従業員側の確定申告などで是正することになります(誤りを放置すると追徴課税リスク)。スモールビジネスを世界の主役に フリー株式会社
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ステップ4:自己批判・リスクの洗い出し
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反対解釈の余地
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「還付額が大きい=会社が現金を多く支出したから、その分を税務署が返してくれるはずだ」という感覚は実務者にありがちですが、
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税法上はあくまで「従業員の税金の精算」であり、会社は源泉徴収義務者として預かり金の出し入れを管理しているだけ。
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会社の懐とは切り離して考える必要があります。
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実務上の見落としがちな点
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納期の特例を受けている場合、
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7〜12月分を翌年1/20 までにまとめて納付するので、
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年末調整による過納額の相殺はこの納付計算に織り込む必要があります。
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中途入社者で前職分込みの年末調整を行う場合、
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前職の源泉徴収票がなければ年末調整不可 → 確定申告へ、というルールも No.2674 に明記されており、
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無理に推測で年末調整して大きな還付をすると、後から誤りとして指摘されるリスクがあります。国税庁+1
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隠れた前提で結論が変わりうる点
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質問文だけでは、
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還付が「正しい計算の結果」なのか
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あるいは「控除のダブり・前職情報の誤り」等によるミスなのか
が判別できません。
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もしミスだった場合、
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「年末調整過納額還付請求書」は使えず、
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会社側の年末調整誤りとして是正・追徴の対象になり得ます。スモールビジネスを世界の主役に フリー株式会社+1
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根拠資料一覧(公的機関)
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国税庁タックスアンサー No.2674「中途就職者の年末調整」
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中途就職者について、前職分を含めて年末調整する手続きと前職源泉徴収票がない場合の取扱い。国税庁+1
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国税庁タックスアンサー No.2675「年末調整の過不足額の精算」
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過納額の還付方法(年末調整を行った月分の源泉税からの差引き、翌月以降の源泉税からの差引き、過納額還付請求書による還付)。国税庁+1
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国税庁「A2-17 源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額の還付請求」
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「年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」の提出要件(解散・休業、徴収税額がなくなった場合、2か月経過しても還付しきれない場合など)。国税庁+1
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国税庁「年末調整のしかた(令和7年分)」第4章 過不足額の精算(PDF)
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源泉徴収簿への過不足額の記載方法、過納額の還付・不足額の徴収の実務手順。国税庁+1
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国税庁タックスアンサー・各種解説(追徴課税等に関する参考)
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年末調整の誤りがあった場合の追徴課税の考え方。スモールビジネスを世界の主役に フリー株式会社+1
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注意事項・リスク(まとめ)
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通常は「税務署から現金で全額戻る」のではなく、「源泉所得税の納付額から控除」して精算する仕組みである点を、社内説明でも明確にしておく必要があります。
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相殺しきれないケースで「年末調整過納額還付請求書」を使うのは例外であり、要件・添付書類が細かく決まっているため、実務では税理士・税務署に確認のうえで対応すべきです。国税庁+1
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中途入社者の前職源泉徴収票がないまま年末調整をし、結果として還付が大きくなっている場合は、そもそも年末調整を行う前提を満たしていない可能性があるため要注意です。国税庁+1
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「計算ミスによる還付しすぎ」は、過納額還付請求書ではなく、年末調整の再計算・確定申告・追徴課税の問題になり得るため、発覚時期・金額・従業員の状況に応じた是正方法を検討する必要があります。スモールビジネスを世界の主役に フリー株式会社+1
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