結論
会社が管理する駐車場の出口にある鉄板につまずいて転倒したのであれば、
原則として「業務災害」と判断される可能性が高く、通勤災害とはみなされないケースが多いです。
ただし、
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その駐車場や鉄板が本当に「事業場の施設・設備(会社の支配管理下)」と言えるか
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事故時点での行動がどこまで「事業主の支配管理下」での行動か
といった個別事情により最終判断が変わり得ます。
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思考プロセスと根拠
ステップ1:論点整理
ご質問の核心は
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会社駐車場出口での転倒が「業務災害」か「通勤災害」か
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この二者を区分する**判断基準(一次情報)**は何か
です。
ステップ2:適用除外の有無(ごく大枠)
労災保険給付の対象となる災害は、法律上
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業務災害
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複数業務要因災害
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通勤災害
などに分類されます(労働者災害補償保険法7条)e-Gov 法令検索
今回のような「出退勤時の転倒」であれば、通常
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業務災害か
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通勤災害か
のどちらかで検討することになり、「労災の対象外」となる典型的な除外事由(全く仕事と無関係な私的行為のみ、など)は、現時点の情報からは直ちには見当たりません。
ステップ3:法令・通達等に基づく本質的な判断
3-1. 業務災害の基本的な考え方(事業主の支配・管理下かどうか)
厚生労働省や労働局の資料では、業務災害について、概ね次のように説明されています。
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業務災害とは「業務上の事由による負傷・疾病等」であり、
事業場施設内で業務に従事しているときの災害は、
「事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生するもの」と考えられるため、原則として業務災害と認められる厚生労働省 -
また、東京都のリーフレットでは、
「休憩時間や就業時間前後に事業場施設内において、業務と関係のない私的行為による災害は原則業務災害にならないが、
事業場の施設・設備や管理状況が原因で発生した災害は業務災害と認められる」と明示されています。はたらく東京都
→ つまり
① 事業主の支配・管理下(事業場施設内)で発生し、
② その施設・設備・管理状況が原因
であれば、就業時間前後や休憩中であっても 業務災害 と判断されるのが行政実務の基本線です。
今回のケースでは
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会社が管理する駐車場
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その出口に設置された鉄板につまずいて転倒
という前提であれば、鉄板は 「事業場の施設・設備」 に当たると考えられ、上記②の要件を満たす可能性が非常に高いと考えられます。
3-2. 通勤災害の定義と「会社敷地との境目」
通勤災害については、労災保険法および厚生労働省・労働局の解説で、次のように整理されています。
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労災保険法7条2項(および関係条文)では、「通勤」の内容として、
「就業に関し、住居と就業の場所との間の往復」
などの一定の移動を、合理的な経路・方法で行うものと定義e-Gov 法令検索 -
東京労働局・福井労働局等の「通勤災害について」のページでも、
「通勤とは、就業に関し、①住居と就業の場所との間の往復 等を、合理的な経路及び方法により行い、かつ、業務の性質を有するものを除くもの」と説明されています。都道府県労働局所在地一覧+1
この「業務の性質を有するものを除く」とは、
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事業主の専用交通機関
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事業主の強い指揮命令の下で行う移動
など、事業主の支配管理が強く及んでいる行為は通勤ではなく業務災害側で扱うという趣旨です。都道府県労働局所在地一覧
また、行政実務上は
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通勤は「自宅敷地の外」から「事業場敷地の入口(境界)」までの間
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事業場敷地内に入った後の災害は、原則として「事業主の支配管理下での災害」として業務災害
という整理がなされています(この点は、各労働局や厚労省の通勤災害Q&A・リーフレットで一貫)。はたらく東京都+1
3-3. 今回の「会社の駐車場出口の鉄板」を当てはめると
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その駐車場が「会社の事業場施設」かどうか
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会社の敷地内に設置された駐車場(社員用・来客用を問わず)で、会社が維持管理している場合
→ その出口にある鉄板は、通常「事業場の施設・設備」に含まれる。 -
逆に、近隣のコインパーキング等で、会社が管理していない場合
→ そこは通勤経路上の一地点にすぎず、「事業場施設」とまでは言えない。
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鉄板が原因でつまずいたという事情
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「施設・設備や管理状況が原因の災害は業務災害と認められる」との行政解釈に合致。はたらく東京都+1
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時間帯(出勤時・退勤時・休憩中など)
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就業時間前後や休憩中であっても、
事業主の支配管理下にあり、かつ施設・設備が原因であれば業務災害となることが明示されている。はたらく東京都
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以上から、
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「会社が管理する敷地内の駐車場出口にある鉄板」
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そこで鉄板につまずいて転倒
という事実関係であれば、通勤災害ではなく業務災害として取り扱うのが、一次情報(法令・公的資料)に基づく一般的な整理になります。
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根拠資料一覧(一次情報)
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労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)
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第7条(業務災害・通勤災害に関する保険給付の種類)ほか
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e-Gov法令検索
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厚生労働省「業務災害とは…」リーフレット(PDF)
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事業場施設内での災害、施設・設備の管理状況を原因とする災害が業務災害となる旨の解説
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https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-12_0002.pdf 厚生労働省
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東京都産業労働局『働く人のための労働保険・社会保険』第2章 労働者災害補償保険
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「休憩時間等であっても事業場の施設・設備や管理状況などが原因で発生した災害は業務災害と認められる」との記載
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https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/shiryo/r3_shaho_2shou.pdf はたらく東京都
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東京労働局「通勤災害について」
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通勤の定義(住居と就業の場所との間の往復など)、合理的な経路・方法、逸脱・中断等の整理
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https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/tuukin.html 都道府県労働局所在地一覧
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福井労働局「労災認定の考え方(業務災害・複数業務要因災害・通勤災害)」
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通勤の定義(就業に関する移動・合理的な経路及び方法・業務の性質を有するものを除く)などの整理
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https://jsite.mhlw.go.jp/fukui-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/hourei_seido/nintei_kangaekata.html 都道府県労働局所在地一覧
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注意事項・リスク(自己批判的検討)
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敷地境界の判断がグレーなケース
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「駐車場出口」が、法的・実務的に会社敷地の内側なのか外側なのかで結論が変わり得ます。
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物理的な境界線(地積測量図・賃貸契約の範囲等)や、誰が維持管理しているかがポイントになります。
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駐車場の管理主体が会社かどうか
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会社が一括借上げして従業員専用として管理している場合は「事業場施設」と評価されやすい一方、
従業員が任意に利用するコインパーキングのような場所だと、通勤経路上の地点と評価され、通勤災害側で検討される余地があります。
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事故時点の行動が業務と無関係かどうか
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極端な寄り道・私的行為(長時間の遊興等)を行っていた途中での事故であれば、
「業務遂行性」「業務起因性」が否定され、業務災害として認められない可能性もあります。 -
ただし今回のように「単に駐車場出口から出ようとしていた」程度であれば、通常は問題になりにくいと考えられます。
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最終判断は労基署による個別認定
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労災認定は、所轄の労働基準監督署長が、申請書・現場状況・図面・写真等を踏まえて個別に判断します。
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ここで示した基準は「一般的な考え方」であり、すべての事案の結論を保証するものではありません。
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第三者行為災害としての側面
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鉄板を設置したのが工事業者などの第三者であり、その過失が明らかな場合には、
労災とは別に「第三者行為災害」としての取り扱い(求償関係)が問題となることがあります。都道府県労働局所在地一覧+1
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