1. 結論
「年度内に帰国して居住者になったから、非居住者用の支払調書・合計表は全部不要」とは言い切れません。
“非居住者だった期間中に”非居住者として国内源泉所得の支払(=非居住者用支払調書の対象)があった分は、原則として非居住者用の支払調書を作成・提出対象になります(ただし提出不要となる例外あり)。
一方で、非居住者期間中に対象支払が一切ないなら、当然「非居住者用」は作成不要です。
2. 思考プロセスと根拠
ステップ1:論点整理
論点は次の2つです。
(A) 年度途中で 「非居住者→居住者」 に変わった場合、非居住者用の支払調書の要否はどう決まるか
(B) 非居住者用を出す(出さない)場合、支払調書合計表(法定調書合計表)の要否はどうなるか
ステップ2:適用除外・簡易判定フロー(ここが結論を左右します)
非居住者だった期間中に「非居住者等に対する支払」をしたか?
した → 原則、居住者向けの支払調書ではなく、非居住者等向けの支払調書を作成(根拠:非居住者等に対して支払をした場合は非居住者等用の支払調書を作成、国税庁No.7400)。 (国税庁)
していない → 非居住者用支払調書は作成不要(そもそも対象支払がないため)
(人的役務の報酬等の場合)年間50万円以下の提出不要ルールに該当しないか?
非居住者に対し国内で行う人的役務の対価として報酬等を支払った場合は、通常の「報酬、料金…の支払調書」ではなく**「非居住者に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書」**ですが、支払金額が年間50万円以下なら提出不要と明記されています(根拠:国税庁No.7431 注意事項)。 (国税庁)
帰国後(居住者になった後)の給与は年末調整の対象になる
「非居住者に該当していた海外勤務者が日本に帰国した後は居住者」「帰国後の勤務に対する給与については年末調整の対象」とされています(根拠:国税庁No.1935)。 (国税庁)
ステップ3:本題(あなたの問いへの当てはめ)
非居住者“だった期間”に、非居住者として対象となる支払があったなら
→ その分は非居住者用の支払調書(該当様式)を作成・提出が原則です(根拠:国税庁No.7400)。 (国税庁)非居住者用を提出する場合は、法定調書合計表を添付して提出が必要です(根拠:法定調書は「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を作成し添付、国税庁No.7400/非居住者への報酬等も合計表とともに提出、国税庁No.7431)。 (国税庁)
逆に、非居住者期間中に対象支払がない/提出不要要件に該当して非居住者用を一切出さないなら
→ 非居住者用の支払調書も、それに伴う合計表も不要(提出物がないため)
3. 根拠資料一覧(公的資料)
※URLはそのまま貼ると長いので、下にまとめて載せます(すべて国税庁の一次情報です)。
国税庁 No.7400「法定調書の提出義務者」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7400.htm
国税庁 No.7431「『報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書』の提出範囲と提出枚数等」
(注意事項:非居住者へ支払った報酬等がある場合、年間50万円以下は提出不要 等)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7431.htm
国税庁 No.1935「海外勤務者が帰国したときの確定申告」
(帰国後は居住者、帰国後給与は年末調整の対象 等)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1935.htm
4. 注意事項・リスク
**「いつ居住者になったか」の判定(住所・居所の実態)**で結論が変わります。形式的な入国日だけでなく、生活の本拠等の実態で争点になり得ます(居住者・非居住者の区分自体が前提条件)。
支払日(支払の確定日)と、役務提供期間(いつ働いたか)がズレるケースは要注意です。
例:非居住者期間の勤務分を、帰国後にまとめて精算した、など。どの様式でどこまでを「非居住者向け」と扱うかは実務判断が難しくなりやすいです。
「国内源泉所得」に当たるか(特に役務提供の場所、契約形態、役員報酬など)で対象性が変わります。
年間50万円以下で提出不要は、国税庁No.7431上「人的役務の対価としての報酬等」の注意書きとして明記されていますが、あなたの支払の種類がこれに当たるか(給与なのか、報酬なのか、年金なのか等)の切り分けが必要です。 (国税庁)
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